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東京地方裁判所 昭和55年(ワ)8417号 判決

原告

立石公博

右訴訟代理人

林寿二

被告

財団法人日本医療事務教育センター

右代表者清算人

大友信雄

右訴訟代理人

國吉良雄

國吉克典

北河隆之

主文

一  本件訴えは、いずれもこれを却下する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実《省略》

理由

一まず、被告の本案前の抗弁について判断する。

被告が昭和四八年一一月一四日設立の財団法人であること、昭和五五年五月三〇日開催の被告の第四五回理事会において本件解散等決議がされたことは、当事者間に争いがない。そして、〈証拠〉によれば、被告は、本件解散等決議の後、総額一三七三万〇一六〇円の債務を負担していたのに対して資産がまつたくなかつたので、昭和五五年八月三〇日までに、財団法人日本医療教育財団から右同額の寄附を受けるとともに、これをもつて右債務を全額弁済して清算し、同年九月三日ころ、被告の主務官庁である労働大臣に対して清算結了届を提出したことが認められ、この認定に反する証拠はない。

ところで、原告は、被告の清算手続が結了してその法人格が消滅したといい得るためには、その前提たる被告の第四五回理事会における本件解散等決議が有効でなければならない旨主張する。しかし、一定的目的に沿つて管理、運営される特別財産である財団法人において、その清算事務の遂行によつて資産及び負債がいずれも清算され、消滅したときは、既に財団法人としての存在理由を喪失したものというべきであり、しかも、前提たる解散決議の無効によつてその間の清算事務の遂行により弁済を受けた債権者の利益に多大の影響を与えることは避けるべきであるから、本件のように清算事務の遂行により被告の債権者に対する弁済が完了し、被告に資産及び負債のいずれもが存在しない場合には、仮に右清算事務の前提たる第四五回理事会の本件解散等決議に瑕疵があつたとしても、その瑕疵は、右清算事務の結了に何らかの影響を与えないと解するのが相当である。したがつて、原告の右主張は採用しない。

そうすると、右認定事実から明らかなとおり、被告の清算事務は既に結了しているものというべきであるから、被告の権利能力は消滅していることになり、被告は、本訴の当事者能力を有しないことになる。

二以上のとおり、被告が本訴の当事者能力を有していないのであるから、その余の点について判断するまでもなく、本件訴えは、不適法として却下するのが相当であり、訴訟費用の負担については民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。 (井上弘幸)

目録〈省略〉

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